インフレ懸念により、アメリカをはじめとした世界各国の中央銀行が金融引き締めを急速に強化する中、
日本銀行の黒田総裁は金融引締になかなか乗り出しません。
というよりも、「乗り出すことができない」という言葉が適切かもしれません。
その理由は、世界とは異質な形で日本市場を支えてきた日本銀行の取り組みによる副作用に違いがありません。
日本市場のETFを買い入れていた

上場投資信託(ETF)とは、さまざまな銘柄を組み込んで販売されている金融商品のことで、
私達のような一般的な国民も買うことができます。
日本市場のETFといえば、その名の通り、日本市場の株式銘柄を組み込んだETFのことです。
株式というのは、買いたい人が多いと上がり、売りたい人が多いと下がります。
この買いたい人の側に日本銀行が長年ついており、日本市場の景気好転に一役買っていました。
日本銀行の国内ETFの保有量は、全体の約8割を締めており、国内株式の約7%相当にまでのぼっています。
日本銀行は、年間6兆円のETFを買い入れることにより、日本の株式市場の時価総額をつり上げてきたわけです。
しかし、中央銀行が国内の株式を買い支えるというのは、非常にリスキーなことで、
アメリカのFRB(米連邦準備制度理事会)では禁止されています。

金利を引き上げることができない現状
「金利を引き上げる」ということは、どういうことなのか・・・
いま各国では、散らばりすぎた貨幣を回収するために金利を上げている。
貨幣価値を守るための試みですが、
一方で、市場に流通している貨幣の量が減ることにより、
ビジネスをする側(企業)にとっては大変な事態です。
融資を受けるための金利が引き上がり、顧客の財布の紐は固くなる・・・
そうなると、株式市場は下落の一途をたどります。

さて、株式市場が下落すると誰が一番困るのでしょうか?
それは、株式をたくさん持っている人ですよね、、
個人投資家?大口投資家?もちろん困るでしょうが、
一番困るのは、日本市場の約7%もの株式を保有している日本銀行です。
日本銀行が債務超過(借金が保有している資産を超える)ようなことになれば、
日本銀行としての信頼が底落ちします。
そのため金利の引き上げに慎重になっているのですね。。。
ETFの売却はできないのか
金融引締ができないのであれば、
保有しているETFを売却して、お金を回収すればいいと考えられるかもしれません。
しかし、日本市場の7%もの株式を売却するとなると、
どちらにしても日本平均株価の大暴落は免れません。
市場が大混乱してしまうため、売却する選択肢もなかなか見いだせません。
また、売却する空気すらも出すことができない状況です。
実は、日本の株式市場には多くの海外投資家が投資をしています。
日銀が保有しているETFを年〇〇円のペースで売り始める・・・などと発表すれば、
海外投資家はこぞって日本市場から資金を回収するでしょう。。
そうなれば、日本市場は大暴落します。

そして、日本銀行によるETF買い支えというドラッグが切れたとき、
日本市場の本来の姿がおがめるというわけです。
ちなみに、ETFの売却については一切言及されていないものの、
ETFの買い入れについては、今後は控えるという方針は発表されています。

日本銀行が現状を脱することはできるのか

では、日本銀行に現在の状況から脱出する退路はあるのでしょうか?
少なくとも、黒田総裁に退路は見えていないようです。
続投する気もないようですから、次の総裁の裁量ということになりそうです。
私達が資産を守るためにすること

私達にできることは、日本銀行や各国中央銀行の動きを見ることです。
そして、為替の動きも見ておくといいでしょう。
クロス円(ドル円など、〇〇円と表記される)の動向についても目を見晴らせましょう。
円は、ドルに対してだけ弱くなっているのではありません。
ほとんどすべての通貨に対して価値が低くなっています。

週足クロス円 ロシアのルーブルに対してすら価値が暴落している
ドル円でいうと125円が、黒田総裁がいうところの適当な円安ライン。
これを大きく超えて、円の価値が下落したとき、
私達は、日銀がしてきた国内ETFの買い支えというドーピングの副作用を被ることになります。
少しずつでもいいので、日本円でもっている資産を他の国の資産に分散させ、
リスクをヘッジしていきましょう。
今回の3冊
もみあげ流 米国株投資講座
もみあげ (著)
なぜアメリカ投資なのか?初心者にもわかりやすく書かれている入門書になります。
各企業の特徴や、主要人物についても紹介されており、
すでに投資を始められている人にとってもおすすめの一冊になります。
証券会社で口座を開いて、銘柄を選ぶときの参考にしてください。
ただ、忘れてはいけないのは、ドル建てで投資をすることです。
円でドルを買ってから、アメリカの株式なりETFを買うようにしましょう!
新書844改訂新版 日銀を知れば経済がわかる
池上彰(著)
日本銀行についての入門書になります。
初心者にとってもわかりやすく書いており、
難しい用語なども、その都度解説されています。
日本銀行が日本の経済とどのような関わりがあるのかを紐解くことで、
今回わたしが書いた記事の内容もわかりやすくなるかもしれません。
改訂新版 ETFはこの7本を買いなさい 世界No.1 投信評価会社のトップが教えるおすすめ上場投資信託
朝倉 智也 (著)
ETFについての知識を身につけることができます。
ただし、この本はETF投資をする人のためのものなので、
原理などは論文をあさってください(笑)
日本銀行が買い入れているETFですが、実はみなさんも投資することができます。
というよりも、わたしたちが投資する商品であり、日本銀行が買っていることがおかしいのです。
ETF投資についての知識を学ばれたい方は、ぜひこの本を手にとってみてください。
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